わたしは掃除がきらいです。
1週間〜10日ほど放置することもザラだし、
まだあと1日くらいいけるんじゃ?などと思いながらちゃぶ台をどかすと、
子どものたべこぼしが天然のフリーズドライになって出てきたりします。
とはいえ、汚部屋好きなわけではなく、
たとえイヤイヤでも掃除したあとはやっぱりすっきりして気持ちがいいし、
できるならいつでも綺麗な部屋で暮らしたい、そう思っています。
そんな掃除ギライな私がとある騒動をきっかけに、
近所のホームセンターで2000円ほどの”ほうき”を購入。
そしたら別人のようにキレイ好きになった、今回はそんなお話。
”ほうき”と聞くと「意識高い系の高尚なくらしをしよう!」という結論を予想して
身構えてしまうと思うのですが、大丈夫。
私みたいなズボラな人や時間が取れない人。君に特に届け!と思っています。
掃除機vsほうき
──さて、そろそろ掃除するかな。
掃除機の場合、そう思った瞬間から床のゴミを掃除し終えるまでに、
かなりの工程をふんでいることに皆さんはお気付きでしょうか?
よいしょっと掃除機を出してくる、コードを引き出す(なんなら延長コードも用意)、コンセントに刺す、スイッチON、障害物をどける間はスイッチOFF、押して引いて押して引いてアンド騒音、届かなくなってきたら本体をぐいっと引き寄せてand so on…。
ほら、オカンなのに韻まで踏めちゃうくらい工程が多い。
そして、掃除機を片付ける時は、再びこの逆をしなくてはなりません。
対する”ほうき”はどうでしょう、サッサッサッで完了です。
雑な説明だな、とお思いな方に、もう少し丁寧に説明しますと、
最初から順に「サッ(取り出す)・サッ(はく)・サッ(捨てる)・サッ(しまう)」です。ほら、わたしうそつかない。
◆◆◆
最近思うのですが、掃除機ってときどきサボリよるんですよね。
何往復もかけたはずの場所にゴミが落ちていて、
掃除機クン、きみはゴミをなでていただけか?という時が何度もあります。
掃除機をとりまわす動作も音も仰々しく大げさなので
(これだけ派手に動いてるんだから、きっと働いてくれてるだろう)と
過度に期待してしまいがっかりします。
映画や小説などに出てくる、
キエーーーィ!!!と奇声を発して巨大な数珠や白い紙がついた棒を
バッサバッサふり回す祈祷師ほど、あまり効き目がなさそうなフラグ…、あんな感じ。
そうそう、
掃除機の所作はいわゆるパフォーマンス (人目を引くためにする行為) のように
感じてしまうのです。
”ほうき”はその点エレガントです。静かで軽い。
はく時の「シャッシャッシャ」という音は、
騒音というよりも気持ちが洗われるような爽やかな音色。
早朝こそ積極的に出していきたいくらい。
そしておどろくべきその集塵力。
掃除機をかけたあとなのに、
クイックルワイパーをかけたところなのに、
すごい量のゴミを目の前にし「今朝剃ったばかりなのになぁ」と
おなじみのひげそりCMを思わず再現してしまうほど。
織物ラグ、畳、タイル、フローリングの目地も、壁際も、
ピンポイントにかき出せて気持ちがいい。
さらに地味に助かるのが、ほこりが溜まりがちな幅木も”ついでばき”できること。
最新型の掃除機CMでは
毎回「こんなに細いすき間でも薄型ヘッドでラクラク吸い取れます!」と
声高にうたっているけれど、ほうきのしなやかな柔軟性には敵いません。
延長コードをふりまわす必要もなければ、
チリを吸い込まないように息を止めてサイクロン内のゴミを捨てる必要もない。
ガッツンガッツン部屋の角や家具にぶつけたりすることもない。(これはわたしが単に雑なだけかもしれない)
もちろん、”ほうき”でもはき残ししてしまうことはあります。
でもはき残してしまったゴミを見ても、
(わたしったら☆)と自分の非を認めてなぜか素直になれるのです。
無駄に道具を憎まなくて済むのは、
”ほうき”の奥ゆかしさがなせる技なのかもしれません。
……。
放っておくと、たぶんこのまま一晩中”ほうき”の話ができる自信があるのですが、
2000円分の元はとっくに取れているということくらいは、伝わったでしょうか。
ここからはダイジェスト形式でお送りしますと
- むかし「スーパーはぼき」というアイデア商品が大ヒットしたけど、
あの時代から既存の掃除道具に比べて掃除機が使いにくいことに、
うすうすみんな気づいてたってことでは? - せっかくの文明の利器を手放したくないばっかりに
掃除機に足して何とかしちゃった。
そっちじゃない、戻れ戻れ!みたいな。 - クイックルワイパーも手軽さでは◯だが、
あのゴミのアイスホッケー状態になるのが嫌。
「ゴミを途中でこぼすかもしれないけどこのままゴールまで行くぞ!」
という精神。
などなど。
(”ほうき”を買ってからというもの、使うたびにその便利さに感動し夫とともに掃除機ディスりで1日が始まるくらいなので、正直言うとこれくらいじゃ物足りない。)
今までもうっすらと”ほうき”に憧れはあったのですが、
素敵なくらしを提唱するメディアの影響うけまくりで、
「リビングに置いててもサマになる、
伝統工芸もしくは老舗メーカーの上質な”ほうき”でないと!」と思っていました。
しかしそういうのは往々にしてお高いのが難点。
まぁだめならだめで、とためしに買ってみた、
ホームセンターの2000円ほどの昔ながらの”ほうき”。
リビングにかけておいても、これが意外とかわいいのです。
しかも使い込んで、だめになったら燃えるゴミで出せる!
粗大ごみ料金などという出費がいらない!という、
かつては当たり前だったはずのエコなよろこびもうれしいポイント。
掃除ギライこそ”ほうき”──、
掃除における最適解は昔からでていたんですね。
たまには先人の教えもちゃんと聞くべきだな。
しかし同時期に購入した”ちりとり”のカーブが今ひとつ...。
次はいい”ちりとり”がほしい。
おまけの後日談
実母のところへ預けていたむすめを迎えに行った日のこと。
寝落ちしてしまったむすめのかたわらに、
なぜか真新しいほうきが添えられていました。
聞くところによると、
「100均でなぜかほうきを買わされた」とのこと。
おもちゃでなくほうきであることや、
おばあちゃんにいいところを見せたかったんだな、など微笑ましく思うと同時に、
わたしが掃除ギライのままじゃこうはいかなかったかもしれない、
いい影響だなと思ったエピソードでした。